当院では、緩和ケアの一環として胸水や腹水を抜く処置(胸水穿刺、腹水穿刺)を行うことが可能です。
胸水や腹水が溜まる原因はさまざまですが、胸やお腹に溜まった液体(水)により、呼吸困難感や痛みなどの苦痛が引き起こされることがあります。
溜まった水を抜くには、まずは尿量を増加させる薬を内服や注射などで投与することが基本です。
しかし、薬の効果は人により異なり、また効果を感じるまでに時間がかかるため、早急な苦痛緩和を求める場合は穿刺処置を行うことがあります。
≪使用物品≫
●ポータブルエコー
●局所麻酔薬
●穿刺針、シリンジ、ガーゼ等
●排液用のペットボトル
≪手順≫
①胸水・腹水の貯留部位の確認:医師が超音波検査(エコー検査)にて水が溜まっている部位を特定します
②穿刺部位の決定:安全に穿刺できる部位を確認し決定します。
③消毒・局所麻酔:穿刺部位を消毒し、局所麻酔薬を注入することで痛みを軽減します。
④穿刺・抜水:針を刺して水を抜きます。処置中は適宜バイタルサインをチェックします。
⑤抜針:抜く水の量は患者さんの状態によって変わります。水を必要分抜いたら、針を抜いて終了します。
≪注意点≫
◎合併症のリスクがある(痛み、出血、感染症 等)
◎一定時間(概ね30分~1時間程度)適切な姿勢を保持する必要がある
当院では年間20-30回ほど穿刺処置を行っています。(診療実績)
実際に合併症が起こったことはありませんが、どのような処置にも合併症のリスクは伴います。そのため、患者さんの状態によっては処置によるリスクが高く実施できない場合やご本人・ご家族が処置を希望されない場合は、薬(医療用麻薬)の使用など他の方法で苦痛緩和に努めます。
患者さんの苦痛を軽減し、日常生活をより安心して過ごせるようにする手段の1つとして、穿刺処置は非常に有効かと思います。しかし、どのような方法でも、患者さん本人の苦痛が少なく、かつ納得のいく方法を見つけることが大切だと考えています。
緩和ケアではご本人・ご家族がさまざまな選択をしなければならないことがあります。そうしたなかで、こういった苦痛緩和の方法もある、ということを知り、選択肢の一つとしてご理解いただければと思います。