当院は診療科目として緩和ケアを掲げています。
「緩和ケア」とは、病気を治すことを目的とするのではなく、病気による痛みや苦痛を和らげる治療のことです。

そして、緩和ケアの目標は、患者様の身体的、精神的苦痛を緩和することで患者様やご家族様の不安を軽減し、患者様が過ごす時間をできるだけ良くすることです。

在宅での緩和ケアで受けられる医療的処置には以下のようなものがあります。
・痛みや息苦しさなどの身体的苦痛を緩和するための投薬
・胸水や腹水の排液などの処置
・全身状態を維持するための最低限の点滴 等

今回は薬物療法について少しお話しします。
在宅緩和ケアにおける薬物療法では、主に医療用麻薬や鎮痛剤などの薬剤を使用します。それらを、内服薬💊や貼り薬、座薬、皮下・静脈注射💉など様々な方法を用いて投与します。

まずは内服や貼り薬などを使用することが多いですが、当院では、「クーデックエイミーPCA」という機器を使用することがあります。これは、スマートフォンアプリを用いて疼痛をコントロールする医薬品注入器です。輸液量の設定や確認がスマートフォンで簡単にでき、問題が起きた時はアラームで知らせてくれます。またワイヤレス接続のため配線がなく、患者さんの移動を妨げないため、在宅での疼痛コントロールに有用です。

↓↓↓クーデックエイミーPCA

メーカー:大研医器株式会社

クーデックエイミーPCAは2021年に発売された比較的新しい医療機器であり、今後さらに普及していくと思われます。こうした医療機器の在宅管理においては、訪問診療だけではなく、訪問看護師さんや薬剤師さんといった他職種の協力も必要不可欠です。

そのため、先日初めて外部向けのクーデックエイミーPCAの勉強会を実施しました。基本的な操作方法だけではなく、事例を交えて医療用麻薬の管理における留意点などについてお伝えしました。

麻薬と聞くと、「使うと起きられなくなるのではないか」、「寿命が短くなるのではないか」といったネガティブなイメージを持たれている方もいらっしゃいます。しかし、医療用麻薬は正しく使用することで痛みや苦痛を和らげ、普段通りの生活を送れるようサポートするものであり、決して怖いものではありません。

当院では今後も院内だけではなく、院外に向けての情報提供を行いながら、患者様がより安心・安全に住み慣れた場所で過ごすことができるよう、緩和ケアに関する知識や技術を高め、質の高い在宅医療の実現に繋げていきたいと考えています。